結露は冬だけじゃない?夏の結露は要注意

  • Update: 2020-06-27
結露は冬だけじゃない?夏の結露は要注意

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

「結露」は冬の住宅でよく見られる現象ですが、夏にも起こることをご存知でしょうか? しかも夏の「結露」は気が付きにくいばかりか、建物にとって大きなダメージを与えるような場所で発生することが多いのです。 今回は夏に発生する「結露」について、原因や対策について解説したいと思います。

自宅一戸建てホームインスペクション

結露は2種類

まずは結露が発生するメカニズムを簡単に解説いたします。
空気中には水蒸気として一定量の水分を含むことができ、この量を飽和水蒸気量といいます。
飽和水蒸気量は温度が高いほど多く、逆に低いほど少ないことが特徴です。
飽和水蒸気量いっぱいに水蒸気を含んだ空気が冷やされると、その容量を超えて押し出されるように水滴となって現れます。
このように温度が低下し水滴になって現れる現象が結露です。
そして住宅で発生する結露には大きく2種類があります。
2種類の結露とは以下の通りです。

  • 表面結露
  • 内部結露

●表面結露

表面結露は、とくに冬に多く見られる現象です。
室内の水蒸気を含んだ空気が冷やされると、窓ガラスなどの表面に水滴となって現れることがあります。
この表面に現れる結露を表面結露といって、視覚的に確認できることが特徴です。

●内部結露

内部結露は、冬でも起こりますが夏にも起こりやすい現象です。
水蒸気を含んだ空気が壁などの内部に侵入し低温部分で冷やされると、壁内部で水滴となって現れることがあります。
この壁内に現れる結露を内部結露といって、視覚的に確認しにくいことが特徴です。

夏の結露は内部結露になりやすい理由

外部の水蒸気を多く含んだ空気は、壁を通り抜けて壁内に侵入することがあります。
外壁を通じて侵入されることはないというイメージがあるかもしれませんが、水蒸気の分子は非常に細かく、木など多くの建材を比較的容易に通り抜けてしまうのです。
そしてエアコンで室内温度が低下すると、その影響によって壁内の室内に近い部分で低温になる部分が生じます。
つまり壁の内部では暖かい空気と冷たい空気がぶつかり合う現象が起こっているわけです。
壁内に侵入した多くの水蒸気を含んだ空気が壁内の低温部分まで到達すると、そこで結露を発生し水滴となって現れます。
ちなみに、夏に起こる内部結露は室内に近い位置が多く、冬に起こる内部結露は外部に近い位置が多くなります。

内部結露が起こるとどうなる?

内部結露は、建物にとって悪い影響しかありません。
表面結露と違って視覚的に確認することが難しく、気が付かないまま長期に及ぶことがあります。
内部結露が起こることで考えられる悪影響は以下の通りです。

  • カビの繁殖
  • 断熱材の性能低下
  • 木材の腐朽
  • 建物寿命の短縮

●カビの繁殖

カビは栄養分、酸素、温度、水分が揃うことで繁殖します。
結露によって水分が供給されると、カビが繁殖するには非常に適した環境が整います。
壁の内部でカビが繁殖するとダニなどの繁殖につながり、アレルギー疾患など暮らす人の健康にも影響を及ぼすこともある点では注意が必要です。

●断熱材の性能低下

壁内にグラスウールなど繊維系の断熱材を充填している場合、濡れてしまうと自重でずれ落ちることがあります。
そうなると断熱層に欠損が生じ気密性が低下するため、断熱性は著しく損なわれるでしょう。
また繊維系の断熱材は繊維の間に無数の動かない空気層があることで断熱性を発揮するわけですが、濡れて空気層をつぶしてしまうと断熱性も低下します。

●木材の腐朽

木材が多くの水分を含むと腐朽菌が繁殖する可能性が高まります。
木材は、自然の大気中に放置すると含水率はおよそ15%程度になることが一般的です。
おもに腐朽菌は、20%以下の含水率では生息することは難しく、30%以上になると繁殖する危険性が高いといわれています。
内部結露が発生していること気づかないまま放置すると、当然ですが含有率は高まり、壁などに使用されている木材は腐ってしまうこともあるでしょう。
腐朽菌が繁殖すると、木材の組織を分解し強度は著しく低下します。

●建物寿命の短縮

柱や土台など重要な構造部で腐朽が発生した場合、建物の耐久性は低下することになります。
また腐った木材はシロアリの繁殖を招くこともあるなど、被害を拡大させることにもなりかねません。
木材腐朽やシロアリの繁殖などは建物寿命を縮める大きな原因になり、とくに地震発生時では倒壊につながることもあります。
気が付かないことが多い内部結露は、建物にさまざまな影響を及ぼし、ときには家族の安全を脅かすこともあるのです。

夏の結露対策は?

夏に起こる結露は内部結露になりやすく、建物にとってよくない影響を与えることが多いため十分な対策が必要です。
夏に起こりやすい結露対策を2つご紹介いたします。

  • 室内温度を下げ過ぎない
  • 可変透湿気密シートの採用

●室内温度を下げ過ぎない

内部結露は壁内で温度差が生じることで起こります。
夏は、室内を冷やし過ぎることで壁内に温度差が生じやすくなるため、室内の温度管理をする必要があります。
環境省が主導して取り組む「クールビズ」で推奨する室内温度は28℃ですが、この程度の室温を維持しておけば壁内でも結露が起こりにくいといわれています。
またエアコンからの冷風が直接壁面に当たるようだと、その部分の温度低下を招く恐れがあるため注意が必要です。
エアコンの風向きに配慮することも必要になるでしょう。

●可変透湿気密シートの採用

結露対策として、室内壁の石膏ボードの裏側には、湿気が壁内に入り込まないよう防湿シートを張って防湿層を確保することが一般的に推奨されています。
また外壁側には通気層を設け、さらにサイディングの下地などへは、湿気を通しても水分は通さない透湿防水シートを張ることが標準的な方法になっています。
これらは冬の結露には非常に効果を発揮することがわかっていますが、夏に起こる結露には効かない場合もあるようです。
というのも、外部の湿気を多く含んだ空気が外壁材の裏側に入り込んだ場合、透湿防水シートは湿気を通すため壁内に入り込むことがあります。
ところが室内壁側にある防湿シート層によってせき止められてしまい、そこで冷やされると結露を発生させるというメカニズムです。
このような事例から、近年では防湿シートに変わる材料として可変透湿気密シートなども登場しています。 これは、冬など湿度が低い環境では湿気を通さず、夏など湿度が高い環境では湿気を通すという高性能なシートです。
しかも断熱性を左右する気密性の確保もできるため、省エネ効果にも期待できる点も優秀な材料といえるでしょう。

まとめ

結露は、冬だけでなく夏でも起こる可能性があります。
また夏に起こる結露は目に見えない場所で起こることが多いため、注意が必要です。
夏に内部結露を起こさないよう、まずは室内の温度を下げ過ぎないよう心掛けることから始めてみてはいかがでしょうか。

ホームインスペクター 田村 啓
監修者

さくら事務所 執行役員
さくら事務所 プロホームインスペクター
さくら事務所 住宅診断プランナー
だいち災害リスク研究所 研究員

田村 啓

大手リフォーム会社での勤務経験を経て、さくら事務所に参画。
建築の専門的な分野から、生活にまつわるお役立ち情報、防災の分野まで幅広い知見を持つ。多くのメディアや講演、YouTubeにて広く情報発信を行い、NHKドラマ『正直不動産』ではインスペクション部分を監修。2021年4月にさくら事務所 経営企画室長に、2022年5月に執行役員に就任。