住宅新築は人手不足による施工不良が増大する?欠陥住宅を防ぐための方法とは!

  • Update: 2020-06-23
住宅新築は人手不足による施工不良が増大する?欠陥住宅を防ぐための方法とは!

近年、労働者人工の減少に伴い、建設業界においても人手不足が深刻化しています。
人手不足によって住宅の新築工事でも施工不良の増大が懸念されますが、新しい生活がスタートした後に欠陥が見つかるようでは大きな問題です。
手直し工事となると、生活に支障が生じたり、また建物内が汚れるためクリーニングが必要となったりなど、せっかく新築したのに、不本意な結果になってしまったとしかいえません。
住宅新築において人手不足が与える影響や、また欠陥住宅にならないための対策について解説したいと思います。

建設業における人手不足の実態について

国土交通省の資料によると、建設投資は平成4年の84兆円をピークとしてその後減少し、平成22年には41兆円まで落ち込んでいます。
しかし平成23年からは増加に転じ、平成25年以降は50兆円を超えて推移している状況にあります。

出所:国土交通省「建設投資見通し」・「建設業許可業者数調査」、総務省「労働力調査」

その一方で、建設業の就業者の状況を見ると、平成9年の685万人をピークとしてその後減少し、建設投資としては底となる平成22年に498万人、そして平成28年には492万人と上向く兆しは見られません。
そればかりか建設業就業者の高齢化は顕著で、55歳以上が3割以上を占めている現状から、今後においても建設業就業者は減少していく傾向が見て取れます。

出所:【左】総務省「労働力調査」(暦年平均)を基に国土交通省で算出
【右】総務省「労働力調査」を基に国土交通省で算出

このようなデータからも、建設業界は深刻な人手不足にあることがわかります。
東京オリンピック後の建設需要はゆるやかに減少するという見方もありますが、一方で社会インフラなどは今後急速に老朽化することから、維持管理による需要の高まりが予想されます。
建設業界の最も大きな課題は人材を確保することにあり、今後は働き方や賃金体制が見直されるなど若い人が働きやすい環境づくりがいっそう強化されることになるでしょう。

人手不足による住宅新築への影響とは

深刻な人手不足によって建設業界への影響は避けられない状況にあります。
まず経営者の立場から見ると、需要に対して労働力を供給する能力が不足しているため、受注機会の損失が拡大傾向にあります。
受注減少に伴って売り上げや利益が減少するなど悪循環に陥ると、会社を維持することが難しくなり倒産にいたるというケースも発生しています。
実は人手不足による倒産は急増しており、そのなかでも建設業が多くの割合を占めているのです。
そして当然ながら消費者への影響も出ています。
その内容とは、おもに業務の遅延やサービス品質の低下などで、今後もいっそうの深刻化が懸念されます。
住宅新築についても同様のリスクを抱えておりますが、原因が人手不足だけに解決の糸口は見えない状況です。
住宅新築においてどのような影響があるのか具体的に見ていきましょう。

●施工不良の増大

人手不足の影響は実際に工事を行う職人だけでなく、施工管理者についても同様です。
施工管理者は、おもに現場の工程や安全、そして品質を管理することを目的としています。
また担当現場は1戸ではなく複数を同時に管理する必要がありますが、人手不足にともないその数も大幅に増えているということが現状です。
1戸の住宅において着工から完成までの間、品質を確保するために施工管理者によって何度かの検査を行います。
とくに建物の耐久性に影響する重要構造に関連する工事は、施工ルールや法令上の制限など、適正であるか検査を行い、合格をもって次の工程に移行しなくてはいけません。
すべての現場で基準を満たしていることを確認する必要がありますが、多くの現場を抱えた状態では、漏れの発生や、あるいは物理的に不可能といった状態も起こりかねません。
現場の職人も施工管理者によるチェックが甘いと緊張感は欠如し、忘れや不備が発生しやすくなります。
また工程や品質だけでなく安全にも目が行き届かなくなった場合、現場で重大な事故が発生するなど工事がストップしてしまう事態に陥るケースもあります。
このような状況が積み重なった場合、完成の品質は大いに損なわれることは、容易に想像できるのではないでしょうか。

●工期の遅れ

職人は次の工事予定が常に待機している状態となります。
1つの現場にかける時間は限定されますが、天候や施工ミス、材料の手配漏れ、あるいは変更工事の発生など、さまざまな要因で予定をオーバーすることは多々あります。
ところが、人手が足りていない状況においては、増員による対応で解決しようにも簡単ではありません。
また1つの現場には多くの専門業者がそれぞれの担当工事を行うわけですが、前後の工程では関連性が大きく、ある業者が遅れるとその後工程も連鎖的に遅れることになります。
人手が不足すると工程を守ることがいっそう重要になり、また少しのずれが全体の工程に大きな影響を与えることにもなるのです。

年末から年度末にかけてとくに注意が必要

住宅新築において、引き渡しの時期を年末から年度末に設定している場合はとくに注意が必要です。
というのも会社の決算期にあたることが多く目標達成のための重要な時期となるためで、また年間を通じて最も工事量が多い時期でもあります。
したがって年末から年度末にかけての工事は、最も人手不足の影響を受けやすいのです。
品質を維持することよりも工事を完成させることを優先する傾向になりやすく、通常時期の工事と比較して品質は低下する可能性は高いといえるでしょう。

欠陥住宅を防ぐにはホームインスペクション(住宅診断)を活用

人手不足は住宅新築における欠陥を招く恐れがあるため注意が必要です。
欠陥住宅を防ぐためには対策をとることが重要で、施工側にすべてを任せるのではなくホームインスペクション(住宅診断)を実施することで効果を発揮します。
工事期間中の重要な工程など節目において、また内覧会の立ち合いにおいて、第三者の立場から専門的な調査を行うことで、リスクを回避することが可能となります。
第三者となる専門家が工事に介入することでチェック機能の強化を図り、現場では品質の確保に対する意識は向上します。
大切なマイホームを欠陥住宅にしないためにも、ホームインスペクション(住宅診断)の活用を検討してみてはいかがでしょうか。