中古住宅の選び方~周辺環境のチェックも忘れずに~

  • Update: 2020-03-21
中古住宅の選び方~周辺環境のチェックも忘れずに~

入居後の「こんなはずでは…」をできるだけ少なくするには

物件自体のチェックは一生懸命やっても、意外と周辺環境は見落としがち。購入者が入居後に「こんなはずでは…」と後悔することがしばしばありますが、その原因に周辺環境が絡んでいることがよくあるのです。
入居後、窓から見える多数の電線や隣家からの視線が気になったり、近隣にある飲食店が深夜まで営業していて安眠を妨げられたり、入居後しばらくしたら目の前に日照を遮る高い建物が建ったり…とうことは珍しいケースではないのです。
なぜ購入前に気づくことができないのか。それは、物件の内見をするのがたいてい休日の昼間であること、また、周辺の環境が将来どう変化していくのか予測することが困難だからでしょう。例えば将来の計画に関しては、自治体が道路や開発の計画を公表していることもあります。
立地の面でいえば、浸水リスクは忘れずに確認しましょう。物件周辺の道路や地形などである程度の推測をすることも可能です。
また、物件に面した道路にくぼみや陥没があったり周辺の地形より低いと、建物が高台にあっても強い雨が降るたびに水が溜まったり、通行が不便になって意外とストレスになるもの。浸水のリスクも高くなります。周辺道路や敷地などの陥没が大きい場合は地盤が軟弱だという懸念もありますので注意してください。
昨今では多くの自治体が台風などの水害時に住民が安全に避難できるよう「洪水ハザードマップ」を作成しています。浸水が予想される区域やその危険度について、また避難所の位置や緊急連絡先についてもチェックしておくようにしましょう。

物件チェックは日中/夜間、平日/休日とシチュエーションを変えて複数回行うこと

周辺環境について忘れてはならないポイントに、「街灯」もあります。昼間は人通りが多い道路でも夜間は閑散としていたり、駅から自宅まで街灯がなかったりと、安全とはいえないケースがあります。日中に現地を訪れるだけでは気がつきにくいポイントですね。
また、物件周辺に工場がある場合、物件を見に行く土日には稼働していなくても、稼働している平日はトラックが頻繁に通行して危険だったり騒音の原因になったり…ということもあります。物件を内見する際は、可能であれば、時間帯を分けて複数回行くこと。また、休日と平日で環境が変わる可能性を頭の中に入れておくことが大切です。
物件周辺に「面大地」、つまり駐車場や工場跡地、倉庫など比較的広い土地がある場合はどうでしょう。当初は「日当たりがよくていいな」と思っていても、将来的にそこに大きな建物が建つ可能性は否めません。その土地の面積や用途地域を確認し、用途地域などによってどれくらいの建物が建つ可能性があり、それによってどの程度日照に影響が出そうなのか、調べておいたほうが安全です。例えば、隣地の用途地域が「商業地域」で広い土地だと、将来高い建物が経つ可能性があり、日当たりや眺望に大きく影響する可能性があります。

万全を期して避けたい「境界」にまつわるトラブル

入居後に「こんなはずでは……」と後悔する大きな原因となるのが周辺環境ですが、入居後のトラブルというと、どんなことが頭に浮かびますか?
トラブルの原因として多いのは、「境界」です。特に中古住宅の場合は、境界がはっきりしていないケースもたくさんあります。
ではどうすればいいか。もし購入を予定している物件の境界がはっきりしていない場合は、「引っ越しまでに売主の責任と負担で境界を明確に定めておくこと」といったことを契約書で取り決めてください。もし境界線上に立つ塀などがあれば、あわせて権利関係を明確にしておくこと。境界に関することを曖昧なままにしておくと、のちのち、トラブルの火種になります。
境界といえば、「越境物」、つまり植栽の枝など空中で境界線をまたぐものもトラブルになりかねません。植栽であれば切れば済む話かもしれませんが、建築物が越境している場合は話が複雑になります。もし購入時点で建物が越境状態にある場合、「将来的に建て直す場合は越境を解消すること」など、売主と隣地所有者との間で覚書を交わしてもらうようにしてください。
なお、購入を検討している物件が斜めになった土地に建っている場合は、「擁壁(ようへき)」にも要注意です。高低差のある土地に建物を建てる場合、それを平らにするために壁状の構造物を使いますが、これを擁壁と呼びます。以前は間知石(けんちいし)や大谷石(おおやいし)などを積んだ擁壁が多く、現在も中古物件にはよく見られますが、購入時には将来的に擁壁を造り替えることも視野に入れておかなくてはなりません。
というのも、現在2メートル以上の高さの擁壁を造るには建築確認が必要で、その構造は基本的にRC(鉄筋コンクリート)でなければ許可が下りません。また、その他の構造要件に関しても、建築基準法施行令第142条で細かく規定されています。擁壁をRCで造り替えることになった場合、数百万から一千万単位の金額が必要になるため、擁壁のある物件を購入する際はこの点を念頭に置いておくようにしてください。

気になることがあれば専門家に相談を

購入を検討している物件の内見時以外にも時間帯によって周辺の環境がどう変わるのかを見ておくことやハザードマップで周辺地域の災害リスクを確認しておくことも重要なチェックポイントです。
購入を検討している地域にどんな災害が起こり得るのかを知ったり、あなたの命を守る建物にするためにやっておくべき補修など、入居後の後悔を少なくするためにも一度、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。