新築工事における施主検査の重要性について

  • Update: 2020-01-10
新築工事における施主検査の重要性について

新築の注文住宅や建売住宅で起こる「施工不良」「施工ミス」の大半は、工事中に堅実に「検査」を行うことで発生を防げるもの。ところが、昨今、職人も現場監督も人手不足が叫ばれ、本来必要とされている検査が雑になったり、行われていなかったりする建設現場が後を絶ちません。
ここでは、一戸建て住宅の工事で特に重要となる検査タイミングとその内容をご紹介します。

新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)サービス

適切な工事の進め方

  1. 職人さんが図面をもとに現場で手作業により施工
  2. 現場監督など施工会社のスタッフが現場を検査・チェック
  3. 見つかった施工不良を職人さんに手直ししてもらう
  4. 現場監督などが手直しされていることを確認
  5. 次の工事工程に移る

この手順で工事を進めれば、後で見えなくなる基礎コンクリートの内部や土台、壁の中といった「隠ぺい部」に欠陥が潜むような事態は起きづらくなります。ところが、実際には2、3、4の「検査・手直し・手直し確認」が行われずに完成を迎えている建物が少なくありません。

住宅の施工品質は人・時間・お金が左右する

理由は様々で、施主・発注主に約束した期日に間に合わないから時間短縮したかった、現場監督の人手が足らず検査ができなかった、手直しする職人の費用を削ったなどいろいろですが、簡単に言えば「時間がない」「経費をかけられない」「人手が足りない」というものです。

実際に住む施主・契約者の方々は、建物が完成した後や代金決済の直前にやっと建物の中に入ることがほとんどですから、すでに建材で覆われてしまった部分の工事の不具合には気付けません。
ですから、これからご紹介する各工程でしっかり現場監督や、場合によっては施主・契約者自ら手配する第三者に検査してもらうことが大切です。

工事中にチェックしておきたいこと

施主や購入者・契約者がじっくり建物を見られる施主検査や完成検査、内覧会は完成段階のため、おもに内装材など表面部分の仕上がりを確認する作業となります。
しかし、それらは仮に不具合があっても手直しが可能であり、本来は、建物の性能に関わり次に工事に移ると見えなくなる・直せなくなる部分のチェックが非常に重要なわけですから、下記の工事工程ごとにしっかり検査・チェックを行ってもらいます。

基礎工事

住宅の基礎は建物の根幹となる部分。ここの施工に大きな問題が潜んでいると、いずれ建物が傾き始めたり、地震が起きたときに建物が基礎から抜けたり基礎ごと壊れてしまうということも起きることがあります。 しかし完成後には、鉄筋や金物(かなもの)といった構造上重要な部分は隠れるため、施工時に設計図面通りの鉄筋径および配置になっているのか、そして法令基準などを守った施工になっているかを厳しくチェックしたいところです。

これらチェックは専門的な知識が必要となります。ですが、専門知識がない方でもチェックできることがあります。それは「きれいな現場」であるかどうか。
例えば基礎型枠の内部にゴミなどの異物が混入していないか、型枠はきれいに掃除がされているかといったことで、このようなことができていないと性能や仕上がりに影響を及ぼすこともあるため、施主・契約者の目線でも検査は可能です。
そんなこと?と思われるかもしれませんが、現場に目を配り、その工事の重要性を理解している職人や現場監督ならしっかり行うのが普通です。清掃状態は品質を確保するうえでひとつの目安となるでしょう。

またコンクリート打設(流し込み)の当日には、コンクリートの品質を確保するための対応にも注意します。工場から運ばれてきた生コンに対し現場で水が加わることがあれば、職人は施工しやすくなるのですが、調合されたコンクリートの質に大きな変化が起き、強度が上がらなかったり、長期的な耐久性が著しく低くなる場合があります。ですから、激しく雨が降るような日の打設は中止することが必要です。
「今日コンクリートを流しておかないと、次の工事が遅れる!」と打設してしまう現場もありますので、打設日の予定を聞き、その日の天候次第で打設有無を確認するといいでしょう。また晴天であっても現場で生コンに加水されるようなことは避けることが重要です。

断熱工事

住宅にとって断熱性能は、快適な生活を送るうえで重要な要素のひとつとなっています。また、冷暖房費にも影響することなので、家計の面でも重要な工事です。
断熱性能は断熱材の種類や仕様によって効果は変わりますが、施工精度に大きく左右される部分でもあります。この点においても本来は施工管理者等による適切な検査が行われるのが一般的ですが、中には検査の正確さが欠けているケースが散見されます。

そこで施主・契約者が現場に入れたときに是非チェックしてほしいのが「断熱材を付け忘れていたり、隙間が空いていないか」です。住宅の断熱性能を確保するうえで非常に重要なポイントは、隙間なく連続した断熱層を確保することになるからです。
断熱材同士の隙間から熱の移動が行われやすくなるためで、できるだけ隙間・欠損のない状態にしないと設計で期待した断熱性能を十分に発揮することができなくなる恐れがあるのです。断熱工事が完了した時点で、全体に隙間が生じていないかという点は視覚的にわかりやすく、また重要なことであるため、チェックしておくと安心につながるでしょう。

大工工事

大工工事は、おもに床の仕上げ(フローリングやじゅうたん)や壁や天井の壁紙・クロスを貼る手前までの工程で、床下地、壁下地といったものをつくる工事です。壁の下地が完成した状態になると、部屋が区切られ間取りはわかるようになりますから、実際の生活をイメージしやすく使い勝手などをチェックすることが可能です。
このタイミングで確認しておくべきことは床や壁、ドア枠などが水平・垂直に工事されているかどうか。職人が手仕事で床や壁を作っていくこともあり、手仕事ゆえの若干の傾きは「施工誤差」と呼び、修繕の対象にはしません。ですから、この施工誤差を超え、見た目や機能に支障がない施工となっているかどうかを確認します。
また、石膏ボードを貼る前の段階でコンセントやスイッチの位置、また棚の高さなどが確認できれば、場合によっては変更が可能なタイミングでもあります。壁に額などを取り付けるための下地補強なども、石膏ボードを貼る前であれば物理的には取り付けできます。
ただし、工事は契約書の規定や法律、予め決められた見積り・予算に応じて進められていますから、それらに影響がない又は無理なく変更が可能な場合に限られます。

引き渡し前の施主・契約者検査は最後のチャンス

完成検査・施主検査・竣工検査・内覧会など、名称は売主や建設会社、販売会社などにより様々ですが、要は「工事が一通り終わり、代金決済=引き渡し前に契約者が確認できる会」が行われるのが一般的です。
施工が適切に行われているかを見られる範囲でチェックできる機会ですが、特に注文住宅では、発注した内装材や設備機器類がすべてその通りになっているかも確認する必要があるため、重要な日となります。また、建物の内外において、キズや仕上がり具合のような品質に関することや、機器や設備の取り決めとの一致性および動作などをチェックし、不備があれば改善を依頼できます。

施主検査のチェック項目

ところが、キズや汚れはチェックしたつもりが、いよいよ新しい生活をスタート!と思ったとたん、あそこが壊れた、よく見たらあそこもこの仕上がりでいいの・・・?と気になることが出てきて、だんだん不安になってくるがよくあります。
完成前にしっかり見ていたつもりでも、使う・動かすことで建物に不具合症状が出ることは決して珍しくはありませんが、引っ越し完了後に手直し工事が始まると、せっかくクリーニングで綺麗になっていた部屋にホコリが舞うのが気になったり、新居に職人さんたちが入ってきたと、何かと落ち着かないものです。
また、一度設置した大きな家具を動かすことで不要な傷がついてしまうことが心配という方も少なくありません。そこで、建物の完成から引き渡しに数日でも余裕があるなら、「完成検査(竣工検査、施主検査)」をしっかりご自身の手と目で行っておくことがお勧めです。
引渡し直前の施主検査では、おもに仕上がりに関する品質と、設置されているものの一致や動作についてチェックすることになります。気になる部分には忘れがないようマスキングテープなどを貼って目印としましょう。

具体的なチェック内容について見ていきましょう。

建物内部

  • キズ、剥がれ、浮き
    工事期間中は、施工が完了したら速やかに養生材で表面を保護しますが、多くの施工業者が出入りするため、キズを完全に防ぐことは難しくなりますので、仕上げ材の部分的な剥がれや浮きなども補修が必要です。補修漏れがないかチェックを行います。

    • フローリング
    • 巾木
    • 家具
    • 建具
    • サッシ
    • クロスなど

    なお引渡し後に引っ越しが原因で付いたキズは引っ越し業者の責任で補修が行われる必要があります。

  • 動作確認
    建具や設備の扉など、生活するうえで動作に支障はないかチェックを行います。

    • 建具の開閉
    • 窓やシャッターの開閉
    • スムーズな施錠など
  • 音鳴り
    おもに施工不良や調整不足によって発生する音鳴りについてチェックを行います。

    • 床の音鳴り
    • 階段の音鳴り
    • 建具や扉など開閉時の異音など
  • その他
      <li設備など取り決めとの一致
  • クロスの継ぎ目開き
  • ビスの固定
  • 建具枠の傾きや隙間の均一など

建物外部

  • キズ、ひび割れ、破損
    外部においてもキズやひび割れなどのチェックを行います。
    外部の場合、表面のキズ程度であれば補修を行うことが可能ですが、ひび割れや破損によって水が浸入し構造部に影響を及ぼす恐れがある部位については、交換を行うなどの適切な対応が必要となります。

    • サッシ
    • 外壁材およびコーキング
    • タイルおよび目地など
    • 基礎
  • その他
    • 基礎のジャンカ
    • 塗装の色むら
    • 雨どいの固定状況など

ホームインスペクション(住宅診断)の活用

住宅の新築は人生において何度もあるわけではない大きな買い物です。 したがって施工不良を未然に防ぎ、一定の品質を確保するためにも、施主の立場で家づくりに関わっていくことが重要となります。 また専門的な見地から根拠に基づく判断が加わることによって、より信頼性の高い家づくりが可能です。 ホームインスペクション(住宅診断)は利害関係のない独立した第三者の立場から客観的に判断をすることができます。

着工から完成まで、長い道のり。安心して長く生活を送るためにもホームインスペクション(住宅診断)の活用を検討してみてはいかがでしょうか。