既存住宅売買かし保険は加入すべき? 保証内容と検査基準

  • Update: 2019-11-16
既存住宅売買かし保険は加入すべき? 保証内容と検査基準

「既存住宅売買かし保険」という、中古住宅を対象とした保険があることをご存じですか?
建物の検査と保証がセットになったもので、原則として中古住宅の売主が加入します。

瑕疵(かし)というのは、本来備わっているはずの品質にある欠陥や不具合のこと。
くわえて、一般的な注意を払っていても発見できないようなかしのことを「隠れた瑕疵」といいます。

そんな中古住宅のための保険商品「既存住宅売買かし保険」に加入していることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

なぜ既存住宅売買かし保険が必要なのか

海外諸国と比べて日本の中古住宅があまり流通しないのは、中古住宅の品質に不安を持っている方が多いというのが、大きな理由として挙げられます。
建築中の現場を確認していないことと、建てられてから年数が経っているというのが、主な不安の要因です。

品確法(=住宅の品質確保の促進等に関する法律)において、購入した不動産に「隠れた瑕疵」があったと認められた場合、売主は引き渡し後10年間は「瑕疵担保責任」を負わなければならないと定められています。これを「瑕疵担保責任」といいます。
ところが、この規定の対象となるのは新築住宅のみ。中古住宅には適用されません。

民法では、隠れた瑕疵があった場合、売主は“発見した時から1年間“責任を負わなければならないとされていま す。しかし、こちらは任意規定であり、また売主の責任があまりにも重すぎるということで、個人間の取引においては“瑕疵担保責任を負わない”旨の特約も有効とされています。

ただし、売主が宅建業者で買主が個人の場合には、買主に対して民法の規定よりも不利な特約をつけることは無効となってしまうため、宅建業者と個人の取引においては“引き渡しの後2年以上”責任を負うという特約に落ち着く場合が多いです。

しかし、実際のところ中古住宅の売主のほとんどは個人であり、「瑕疵担保責任」に関しては“引き渡し後3ヶ月間”あるいは“瑕疵担保責任を負わない”取り決めの多いのが現状です。
これでは、中古住宅が流通しないのも無理はありません。

※2020年4月の民法改正により、「瑕疵」という文言は「契約の内容に適合しない」という文言に変更されます。

既存住宅売買かし保険の内容は?

このような事情もあり、中古住宅を購入する上で買主の心理的、コスト的な負担を少しでも軽くするために、2010年4月から『既存住宅売買かし保険』の取り扱いが始まりました。
保険といっても、建物全体のどのような部分にでも適用されるわけではありません。
対象となる範囲は以下のとおり定められています。

構造耐力上主要な部分

地震や風、雪の重みなど、様々な衝撃から建物を支える部分のことで、具体的には住宅の基礎や土台、壁、柱、その他の構造部材を指します。
詳しくは、建築基準法施行令第1条3号で規定されています。

雨水の侵入を防止する部分

屋根や外壁の仕上げと下地、ドアや窓など外部開口のサッシ部分、雨水排水管などの屋内排水設備など、雨水が侵入しやすい部分を指します。
住宅の品質確保の促進等に関する法律(=品確法)施行5条第2項に規定されています。

 

つまり、仕上げや設備などの不良に関して補償されるものではなく、構造上の不安や雨漏りの危険性がある部分に対して補償されるというわけです。
この対象範囲に関しては、新築住宅において売主が負う「瑕疵担保責任」も同様です。
既存住宅売買瑕疵かし保険に加入していると、必要な耐力が満たされていないことが発覚した場合や、雨漏りが発生した時などに、保険金として修補や調査にかかる費用、さらには転居や仮住まいにかかる費用が保険金として支払われます。
保険金額の上限は、加入の際に500万円、もしくは1,000万円のいずれかを選択できます。

保険期間は、売主が宅建業者の場合は2年以上で最大5年間。個人間売買では1年以上で最大5年間。 売主が宅建業者の場合は宅建業者が、売主が個人の場合には売主が委託することで検査事業者が被保険者となります。

検査機関と検査方法について

既存住宅売買かし保険は、国土交通大臣によって指定された住宅瑕疵担保責任保険法人で取り扱っています。 以下の5法人が、指定された保険法人です。

  • (株)住宅あんしん保証
  • 住宅保証機構(株)
  • (株)日本住宅保証検査機構
  • (株)ハウスジーメン
  • ハウスプラス住宅保証(株)

宅建業者は、この中から保険契約を締結する法人を自由に選択できます。

既存住宅売買かし保険に加入するにあたり、一級建築士資格を持った住宅瑕疵担保責任保険法人の検査員が、対象となる中古住宅の現場検査を行います。
その現場検査により、保険法人が定めた一定の検査基準をクリアしていることが保険加入の要件ですが、クリアしなかった場合にも該当箇所の補修を行ってから再検査を受けることが可能です。

検査の内容としては、「構造耐力上主要な部分」であれば基礎のひび割れ、鉄筋の露出、コンクリートの劣化、床や柱の傾斜、構造材の蟻害や腐食など。
「雨水の侵入を防止する部分」については、シーリング材の劣化やサッシの開閉不良、天井や軒裏の雨漏り跡、屋根材の破損など。
こういった部分について、目視や計測、機器も使用しながら検査を行います。

ただし、事前にインスペクターによる建物状況調査を実施しており、該当箇所の劣化事象がないと確認された場合、既存住宅売買かし保険の個人間売買タイプ、検査事業者コースにおいては住宅瑕疵担保責任保険法人の現場検査を省略することができます。

既存住宅売買かし保険の加入にかかる費用

保険に加入するためには、当然ながら保険料を支払わなければなりません。
既存住宅売買かし保険の場合は、保険料とは別に現場検査手数料も発生します。

保険金額は保険法人によって、また住宅の規模によっても異なります。
たとえば、『(株)住宅あんしん保証』の保険料と現場検査手数料を見てみましょう。

延床面積 保険料 検査手数料 合計
100m2未満 22,390円保険料:22,390円 21,840円検査手数料:21,840円 44,230円合計:44,230円
100m2以上125m2未満 24,600円保険料:24,600円 23,100円検査手数料:23,100円 47,700円合計:47,700円
125m2以上150m2未満 28,890円保険料:28,890円 24,990円検査手数料:24,990円 53,880円合計:53,880円
150m2以上 34,800円保険料:34,800円 28,130円検査手数料:28,130円 62,930円合計:62,930円

※保険期間:2年 保険金額:500万円 給排水管路担保特約なし

保険料は消費税非課税、検査手数料は消費税込みの金額です。
35坪の戸建て住宅であれば、50,000円以内の費用で加入できるということですね。

なお、加入するのは原則として売主である宅建業者または検査事業で、保険金も被保険者である宅建業者・検査事業者に対して支払われます。
保険料の支払いを行うのも被保険者ですが、この費用を誰が負担するかについての定めはありません。
加入を検討する際には、あらかじめ当事者同士で話し合い、費用負担を明確にしておく必要がありますね。

そもそも、既存住宅売買かし保険は任意の保険です。売主である宅建事業者にその気がなければ、加入しないまま売買が行われてしまうということも考えられます。
しかし、既存住宅売買かし保険に加入していることで、買主は「もしも」の場合の安心を得ることができます。売主に確認し、もし加入を検討していないということであれば、あなたの方から保険加入を求めてもよいでしょう。

どんな建物でも加入できるわけではない

既存住宅売買かし保険に加入するには、新耐震基準に適合した住宅でなければならないと条件付けられています。 適合していることがわかる書類がない場合は、耐震診断を受ける、耐震基準適合証明を利用するなどすることで、加入できる場合があります。
それ以前に新耐震基準に適合していない場合は、耐震補強や工事を行うなどして、検査を受けることができます。

既存住宅売買かし保険は、買主にとって中古住宅を購入する上での安心材料になるのはもちろんのこと、売主にとっても万が一の時のリスクヘッジとなってくれる、心強い保険です。
中古住宅の購入をお考えの際には、売主と一緒に既存住宅売買瑕疵(かし)保険の加入も検討されてみてはいかがでしょうか。