中古マンション購入時のリスクとは?契約前に知っておきたい3つのチェックポイント

  • Update: 2019-07-05
中古マンション購入時のリスクとは?契約前に知っておきたい3つのチェックポイント

中古マンションを購入するときには、「中古マンション」ならではのリスクを知っておかなければいけません。そのリスクを知っておくことで、マンションに入居した後に満足して居住できるかどうかが決まります。

今回の記事は、そんな「中古マンションのリスク」にフォーカスを当て、知っておきたい3つのポイントを解説していきます。

中古マンションホームインスペクション

中古マンションは共用部分の劣化をチェックに

中古マンションのリスクについて知っておくべき1つ目は、マンション共用部の劣化に注意するという点です。そのためには、中古マンション購入前に以下をチェックしましょう。

●共用の使い方や劣化具合

まずは、以下の共用部の使い方や劣化具合をチェックしましょう。

  • マンションの外壁
  • エントランスやエレベーターホール
  • 外部廊下やゴミ置き場
  • 駐輪場や駐車場

たとえば、築年数が同じであるほかの中古マンションと比べて外壁が劣化しているのであれば、修繕計画が甘いなどの問題があるかもしれません。
また、ゴミ置き場や駐輪場の使い方が悪ければ、住民のモラルが低かったり、管理会社がきちんと注意喚起をしていたりしていない可能性があります。
「マンションは管理を買え」という言葉があるくらい、マンションでは維持管理状態会社が重要です。管理組合や管理会社がきちんと機能しているかがわかる項目なので、見学時にしっかり見ておきましょう。

●修繕積立金の不足がないか

また、修繕積立金に不足がないかもチェックします。マンションの専有部(≒室内)は居住者が個別に管理・修繕しますが、前項で解説した共用部は管理組合(マンション住民で組成)で管理・修繕します。
実際には管理会社が長期修繕計画を提案、管理組合が承認し、それを基に算出された修繕積立金を所有者が管理会社を経由して管理組合に支払い、その積立金を共用部の修繕に充てるという流れです。
そんな修繕積立金については以下を知っておきましょう。

修繕積立金が不足しているマンションは多い

国土交通省の資料によると、長期修繕計画上の修繕積立額に対して、「実際に積み立てできている額が不足している」と回答したマンションは34.8%にのぼります。
出典:平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の状況

また、「不明」と回答したマンションを除くと、50%を超えるマンションで「不足している」と回答しています。このような状況なので、中古マンション購入時は修繕積立金を必ずチェックしなければいけないのです。

修繕積立金の確認方法

修繕積立金の不足を確認するためには、仲介会社を経由して「重要事項に関わる調査報告書」という書類を管理組合から取得しましょう。この報告書には以下が記載されています。

  • 現在の管理費や修繕積立金
  • 管理費、修繕積立金の滞納額(マンション全体と対象となる部屋)
  • 管理組合の会計(修繕積立金の総額などが記載)
  • 大規模修繕工事の予定
  • 管理費や修繕積立金の値上げ予定

ここでは、滞納額に着目します。滞納が発生している場合、まず管理会社に滞納の理由や状況を確認します。銀行の自動引き落とし日にたまたま残高不足で、単発で発生しているだけなら問題視しなくていいでしょう。うっかり忘れていた程度の話であれば、翌月不足分が支払われることがほとんどだからです。

問題となるのは、何ヶ月も意図的に支払っていない所有者が何人もいる場合。不公平でもありますし、もともと多くのマンションでお金が不足しがちなわけですから、計画通りの管理・修繕ができなくなる原因にもなりかねません。
なお、管理費の額や修繕積立金の計画が適正なのかどうかは、管理に関する複数の書類を詳しく見ないと判断できません。マンション管理士など専門知識を持つ人にチェックを依頼します。

マンション管理インスペクション」サービスは、マンション管理士がマンションの管理状況をチェックし、購入時のリスクや注意点等の確認やアドバイスを行います。

中古マンションは管理組合の運営状況をチェック

「マンションは管理を買え」という言葉は、大きく勘違いされていることがあり、「管理会社」のことだけを指していると思っている方は少なくありません。実はこの「管理」とは、「管理組合運営」を指しているのです。

管理組合とは「所有者全員」のこと。管理会社は管理組合が「委託契約」を結びお金を払って仕事を頼んでいるため、管理会社の業務遂行状況は管理組合がチェックしなくてはいけません。

マンション管理に関わるお金や業務内容は専門知識がないと分からないことが多いため、マンション管理に詳しくない一般の所有者が全てをチェック、指示することは難しいもの。それでも、管理会社から報告される日常に関することや、管理組合の資産(修繕積立金や管理費など)の現状や今後の計画について、こまめに興味を持ちチェックする意欲があることが重要になります。

●総会議事録

管理組合は年に1回、管理組合総会を開くことが法律で規定されています。総会ごとに議案が提案され、その結果をまとめたものが総会議事録です。管理組合の委託により管理会社が過去の議事録を保管しているはずですので、少なくとも直近の1回分、可能であれば3期(3回)分の議事録の写しを見せてもらいます。

どんな議案が提案されているのかとともに、毎年どのくらいの住民が出席しているのかもチェックします。(委任状等書面対応ではなく、実際の臨席数)

平成20年度国土交通省実施のマンション総合調査結果によると、全体の平均は34.1%程度(100戸のマンションなら34世帯の所有者が出席)。マンションの規模によってもこの割合は異なることが多いですが、全員の資産をどう維持・管理していくかを決める重要な会ですから、出席率が高いほうが、マンションをより良くしたい所有者が多いと捉えることもできるのです。

●理事会報告(議事録)

管理組合の中から、管理規約で決められた一定の人数で組成されるのが理事会です。毎年全理事が入れ替わる規約にしている管理組合もあれば、数年の任期にしているケース、半数の理事が交互に入れ替わるようにしているケースと、理事の入れ替わりルールも管理組合により異なります。

理事会は、管理組合から日常の業務報告を受けたり、決済が必要なことを相談されたり、所有者・住民からの声をどう対応するかを話し合ったりするために会議を開きます。毎月開いている管理組合もあれば、数か月に一回不定期に開催しているというところも。

国土交通省が出しているマンション管理標準指針では、理事会の開催数(頻度)は以下のように記載されています。

  • 標準的な対応:少なくとも2か月に1回定期的に開催
  • 望ましい対応:毎月1回定期的に開催

同指針の資料によれば、理事会を月1回程度開催している管理組合は56.0%とのことですから、毎月開催されているか、管理会社経由で理事会報告(議事録)を閲覧させてもらい確認しましょう。
なお、理事会報告には話し合われた内容が大まかに記載されているため、記載されている内容を見ることでそのマンションでどんなことが起きているのか把握できることも。一度は目を通しておきたい資料です。

●駐車場や駐輪場の稼動率

「重要事項に関わる調査報告書」で駐車場や駐輪場の空き区画数を確認しておきます。いくつもの区画で空きが出ているようであれば、将来的に修繕積立金の増額が必要になったりするからです。

駐車場や駐輪場の使用料は、管理費や修繕積立金に充当される計画になっています。稼働率が想定を下回れば、不足が生じ、結果的に修繕積立金が不足したり管理費の上昇につながる可能性があるのです。

そのため、そもそもの稼働率の設定と現在の稼働率を、仲介会社を通じて管理会社へヒアリングしておきましょう。もし、稼働率を大きく下回っていれば管理費上昇リスクがあります。

中古マンションはランニングコストの上昇リスクをチェック

中古マンションについて知っておくべき3つ目のポイントは、ランニングコスト(管理費・修繕積立金)が上昇するリスクです。

●管理費上昇の見極め

管理費が上昇するときは以下のようなときです。

  • 管理会社が変わる
  • 管理形態が変わる
  • 物価の上昇・税制変更

管理会社が変わったり、管理形態が変わったりする予定がある場合は、中古マンション購入前に重要事項で説明されます。
特に物価上昇は将来的に十分起き得ることで、同じ管理内容であっても徐々に値上がりしていくことがありますので、購入時の毎月の引き落とし金額と将来的に同じだと思わないようにしておきましょう。

●修繕積立金上昇の見極め

修繕積立金上昇の見極めは、上述した「重要事項に関わる調査報告書」をチェックすること以外には、そもそも修繕積立金の取り決めを重要事項説明で把握することです。
修繕積立金は長期修繕計画という建物の維持管理計画書に基づいて割り出されていますが、その積立方法は大きく以下の2つに分かれます。

  • 段階増額積立方式:徐々に値上げしていく
  • 均等積立方式:長期的に必要な総試算額を均等に割って一定額を徴収

一般的には、分譲時に売主不動産会社・管理会社が段階増額積み立て方式を管理組合に提案しており、多くのマンションがこちらになっています。購入時の毎月引き落とし額ではなくなる日が来ますので、5年、10年、20年後の予定金額を必ず確認しておきましょう。

均等積立方式は、段階増額積立方式に比べて毎月の徴収額は高い傾向です。ですが、早い段階から資金が貯まっていくことと、値上がりリスクが低いため滞納などする人が出にくく、長期的に見ると修繕に必要な資金が安定的に貯まります。国もこの方式にすることを推奨しており、均等積立方式が採用されていれば、管理組合がしっかり長期の計画を組んでいると考えていいでしょう。

どちらの場合でも、「重要事項に関わる調査報告書」で不足分を確認し、将来的に資金不足に陥らないかを確認します。

中古マンションならではのチェックポイントを見逃さない

このように、「共用部の劣化」や「管理組合の運営状況」「ランニングコストの上昇」などは中古マンション特有の要素なので、それらはしっかりチェックしておかないと、いずれリスクとなり得ます。
そのため、上述した点を踏まえて、そのリスクの度合いを「マンション管理インスペクション」で確認しましょう。その確認がリスクヘッジにつながり、引渡し後の満足感につながっていくでしょう。