新築一戸建て工事中のチェックポイント⑥ スリーブとアンカーボルト

  • Update: 2017-11-13
新築一戸建て工事中のチェックポイント⑥ スリーブとアンカーボルト

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

新築一戸建ての工事中のチェックポイントを工程ごとにご紹介する本連載、最初からお読みになりたい方はこちらからどうぞ。

さくら事務所の工事中の第三者現場チェックサービス「新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)」ではさまざまな現場の基礎コンクリートを打つ前後にチェックしたいポイントとして、前回ではかぶり厚の注意点をご紹介しましたが、他にも注意したいポイントがあります。第6回は「スリーブ」「アンカーボルト」について解説します。

新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)サービス

スリーブや配管と鉄筋が密着している

基礎の立ち上がり部分には、水道の配管やガスの配管を通すための穴が必要な箇所がありますがコンクリートが固まったあとに、その穴を開けるのは手間も時間もかかって面倒です。そのため、コンクリートを流し込む前に、あらかじめ「スリーブ」という穴を開けておきます。

スリーブ

このスリーブ管や水道の配管が、写真のように鉄筋と密着してしまっていることがよくあります。これでは、コンクリートが上手く流れ込まない可能性が。
というのも、コンクリートの中には小さな石が入っていますが、基礎に流し込むコンクリートには、最も大きいもので2cm大の石が入ったものがよく使われており、隅々までしっかり流すためには、細いところでも2cmより大きい幅が必要なのです。

対策として、コンクリートを流し込むときにしっかりと振動をかけ、隅々まで行き渡らせるか、支持具を使って鉄筋とスリーブ管・配管の間にすき間を確保する必要があるのです。

大手のハウスメーカーでは、スリーブ管や配管の設置に支持具を使っているためあまり心配はありません。業者によっては、そういったものを使わないことがよくあるため注意が必要です。工事のミスを事前に防ぐためには、スリーブ管の固定に専用の支持具を使って鉄筋に固定してもらうよう業者に依頼しましょう。

アンカーボルトの不足、間違い、ずれ、傾き

アンカーボルト

基礎と土台を繋ぐ金物を「アンカーボルト」といいます。

アンカーボルトは、地震で建物が揺れたとき、建物が基礎から浮き上がったり、外れたりしないための重要なものです。

ですが、不足や位置の間違い、ずれや傾きがよく見られるのです。

●アンカーボルトの位置が図面とあわないとき

コンクリートを流し込む前に不足や図面との相違がわかった場合は、追加・変更が可能です。(アンカーボルト自体も、金物屋さんやホームセンターでも扱っているものです。)既にコンクリートを流し込んだ後にそれがわかったような場合は、構造設計者の見解を確認・是正方法を検討してもらう必要があります。

●アンカーボルトのずれ、傾きが見つかったら

アンカーボルトの傾きが見つかったら、それほど大きく傾いていない場合であれば、鉄筋のときと同じように根元から曲げることで解決できます。アンカーボルトのずれは、土台を敷いてみて土台の木の端が1~2cmだったら問題です。

いずれのケースでも、修繕が困難なほど傾いていたり、ずれていたりしたときには、構造設計者に確認の上、是正方法を検討してもらう必要があります。

こんな現場だったら、要注意!

たくさんの現場を見ていると、アンカーボルトでトラブルが起きやすい現場には以下のような工事が多いです。

●図面に細かい寸法が書いてない、そもそも図面がない

基礎を作るときには「基礎伏図(きそぶせず)」という図面が必要です。これは、完成後の基礎の形を真上から見たような図面。いわば、間取り図の基礎バージョンといったものでしょうか。

通常の図面では、アンカーボルトの位置をミリメートル単位で細かく記してあります。そのため、どの職人さんが作業を行ったとしても、現場で取り付けの位置を迷うことがないのです。
また、1階の床伏図(ゆかぶせず)という土台の配置を示した図面と、基礎の図面が照らし合わせてあり、継手(部材の接続する部分)の位置にアンカーボルトが配置されます。柱の真下にアンカーボルトがある・・・という、初歩的なミスも起きません。(アンカーボルトがあると、柱が立てられません!)

一方で、アンカーボルトの位置が図面上、点で打ってあるだけ、という大雑把な図面もあります。細かく指定していないため、職人さんによってアンカーボルト取り付け位置にばらつきが出てしまいます。時には、基礎伏図そのものがないというケースも。現場で適当に作ってしまっているのです。
建物で最も大切な基礎に手を抜く業者は、他の部分でも似たようなことがあるかもしれません。安心して工事をお任せできません。

また、基礎の形とその上の土台や柱の位置を照らし合わせていない現場では、通常あるべき継手の位置のアンカーボルト不足も多々あります。継手の位置を確認しないままに基礎の工事を行うため、当然の結果といえるでしょう。

以前、継手15箇所のうちの14箇所において、アンカーボルト不足が確認された現場がありました。これは設計者・現場監理者が、しっかり基礎伏図と床伏図を照らし合わせていない証拠。工事の前に図面をしっかり確認さえしていれば、こんな単純ミスは起きません。

きちんとした業者なら、工事が始まる前に基礎伏図や、工事に関わる図面がでてきます。アンカーボルトの不足や取り付け位置の間違いは、図面の段階でわかるものがほとんど。図面がしっかりしていることを確認してから、工事に入るようにしましょう。

●アンカーボルトをあらかじめ取り付けていない

アンカーボルトの取り付け方には2通りの方法があります。
1つはコンクリートを流し込む前に、あらかじめ型枠などに固定する方法。もう1つは、コンクリートを流し込んで固まるまでの間に手で入れていく方法。

当然ながら、品質が安定するのはコンクリートを流し込む前にあらかじめ型枠などに固定する方法です。

コンクリートを流し込んで固まるまでの間に手で入れていく方法(俗に「手植え」や「田植え」などといわれます。)でアンカーボルトを入れていくと、位置もばらつきが出てしまい、アンカーボルトそのものの重さで沈み込んでしまい、高さも揃いにくくなります。

きちんとした業者なら、アンカーボルトはあらかじめ取り付けておく仕様になっています。大手のハウスメーカーでは、手植えによるアンカーボルトの固定は認めていないところがほとんど。住宅金融支援機構の仕様書でも、アンカーボルトはあらかじめ取り付けておくよう書かれています。

まとめ

ミスを事前に防ぐためにも、アンカーボルトはあらかじめ取り付けるよう業者に依頼しましょう。

契約の時点では、基礎の細かい話までなかなか意識が回らないかもしれませんが、建物の耐久性に関わる部分ですので、ぜひ確認しておきましょう。

次回は、「配筋の注意点」について解説します。

ホームインスペクター 豊泉 元
監修者

さくら事務所 プロホームインスペクター
さくら事務所 住宅診断プランナー

豊泉 元

大学工学部卒業後、建設会社に入社。ものづくりを現場で経験するため、住宅の基礎やマンション躯体の施工業務に職人(多能工)として従事。その後、大手リフォーム会社の現場管理者として、既存住宅及びマンションの改修工事に携わる