「ツーバイフォー工法は地震に強い」って本当?

  • Update: 2022-04-06
「ツーバイフォー工法は地震に強い」って本当?

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

度重なる地震に、耐震性への関心も高まっているようです。そんな中でささやかれるのがこんなフレーズ。

「ツーバイフォー工法の方が、在来工法より耐震性が高いのでおすすめですよ・・・」

そうは言っても

「ツーバイフォー工法なんて初めて聞いた」

「実際のところ一般的な木造とどう違うのかよくわからない・・・」

そんな方も多いのではないでしょうか。

もちろん家づくりは、ほとんどの方が初めての経験ですのでわからないことだらけなのは当然です。しかし、失敗しない住宅選びには、正しい知識と正しい理解が必要になってきます。

そこでこのコラムでは多くの工事現場を見てきた、さくら事務所のホームインスペクター(住宅診断士)が、在来工法(木造軸組工法)とツーバイフォー工法(2×4枠組壁工法)の特徴や注意点について解説します。

ぜひ最後までご覧ください。

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「在来工法」と「ツーバイフォー工法」の違い

在来工法(木造軸組工法)とツーバイフォー工法

そもそも、「在来工法」と「ツーバイフォー工法」の違いがよくわからないという方も多いのではないでしょうか。

「在来工法」とは、「柱」と柱の上に渡して屋根などの重量を支える「梁」を組み合わせて作る工法(軸組)です。地震などの揺れに対しては軸組が壊れたり、変形しないように、主に筋交いを壁の中に設置して支えます。比較的間取りやデザインの自由度が高いのが特徴です。

一方、「ツーバイフォー工法」とは、枠と面(合板)などで構成された壁・床・屋根・天井のパネル(枠組み)を組み合わせて、箱状(6面体)の構造から家をつくる工法です。壁の枠に2インチ×4インチの部材を用いることからツーバイフォー(2×4)工法と呼ばれます。

現場によっては工場で枠組みを作成するので工期の短縮が図れます。

また、箱状になることから、変形に対して強くすることができる特徴があります。

更に2インチ×6インチを組み合わせたツーバイシックス(2×6)工法もあります。

ツーバイフォー工法は地震に強い、のウソ・ホント

構造の違いだけ見れば、「ツーバイフォー工法」の方が地震に強そうに思えます。特に、阪神・淡路大震災の際、「在来工法の住宅が多く倒壊し、ツーバイフォー工法の住宅は倒壊しなかった」といった報道が多くなされました。しかし、それを明らかにするには、歴史的経緯を追いながら、それぞれの工法の特徴を見る必要があります。

「在来工法」のメリット・デメリット

間取りの自由度や今後の増改築のしやすさに重点を置かれている方には「在来工法」が適しています。また、多くのシェアを占めている「在来工法」は、昔から行われている工法のため、日本の職人には馴染み深い工法と言えるでしょう。しかし一方で、携わる設計者や施工者の数が多いため、それだけ品質や性能に格差が生じやすくなります。また、ルールが曖昧なため設計段階からバラつきが大きく、高い品質の住宅を建設しようと意識しなければ、レベルの低い住宅が出来やすいという傾向があります。阪神・淡路大震災では、そのような住宅に被害が集中しました。

「2×4工法」のメリット・デメリット

ツーバイフォー(2×4)工法で建築中の住宅

北米で生まれた「ツーバイフォー工法」は、ルールがマニュアル化されており、誰が設計・施工しても一定レベルの品質と性能が担保されやすいと言えます。そのため、地震による被害が少ないことも事実です。但し、シェアが低い「ツーバイフォー工法」は、そのルールを知っている専門家が少なく、そのため住宅に不具合が発生するケースもあります。

ところが、現在では在来工法の住宅における耐震性は大幅に向上し、「ツーバイフォー工法」と「在来工法」の耐震性の間には大きな差はなくなってきています。

建物の耐震性は建築基準法で定められており、何回かの改正を経ています。

とくに阪神・淡路大震災後にあたる、2000年の建築基準法改正において、木造戸建ての耐震性は大幅に向上しました。

それまでは地震などの横揺れを定める「耐力壁」については「バランス良く設置すること」とだけ定められていたのが、改正後はバランスの計算方法が規定されました。

また、部材同士を接合する金物の使用基準も明確に定められています。

たとえば「在来工法」は建築基準法改正以前、設計者や施工者によって耐力壁や接合金物の使用基準はまちまちでした。そこに明確な基準が定められたことで、耐震性が大幅に向上したのです。

対して「ツーバイフォー工法」は、もともと壁が建物を支える構造であること、標準化が進んだ工法であるため建物ごとのバラつきが少なく、ある程度の強度が確保されていました。したがって、改正後も「在来工法」ほど、大きく仕様が変わっていないと言っていいでしょう。

新築なら「耐震等級」の比較、中古なら2×4が強い

このように2000年以前の建物は、平均すると「ツーバイフォー工法」の方が「在来工法」よりも地震に強かったといってよいでしょう。

しかし、建築基準法改正を経た現在では「ツーバイフォー工法」と「在来工法」との間には、平均的な耐震性の差はないといえます。

また、最近では在来工法でも合板などの面材を壁に貼り、「ツーバイフォー工法」と類似する補強方法を採用する家も増えています。そして、「ツーバイフォー工法」でも、大開口の窓が設置できるようになるなど、「在来工法」との差がなくなってきています。

ポイントは「耐震等級」

実際には同じ工法で建てられたとしても、個々の住宅によって耐震性は大きく異なります。建築基準法で定められた耐震性の規定は、あくまでも最低限度のものです。「最低限度」というのは、震度6強から7の地震でも住宅の構造部分が倒壊・崩壊しないというものであり、建物にある程度の損傷は起こってもある意味「仕方ない」ということです。

こうした損傷に対する補修コストなどを考慮して、建築基準法の耐震基準を上回るレベルの耐震性を求めたい場合もあるでしょう。

そこで参考になるのが、「住宅性能表示制度」の「耐震等級」です。耐震性は工法よりも耐震等級で比較する方が分かりやすいと言えます。

耐震等級は次の3ランクに分けられています。

耐震等級1 耐震等級2 耐震等級3
建築基準法レベルの強さ 建築基準法レベルの1.25倍の強さ 建築基準法レベルの1.5倍の強さ
数百年に一度の大地震(震度6強~7)でも倒壊・崩壊しない。 数百年に一度の大地震(震度6強~7)の1.25倍の力でも倒壊・崩壊しない。 数百年に一度の大地震(震度6強~7)の1.5倍の力でも倒壊・崩壊しない。
耐震等級1 建築基準法レベルの強さ 数百年に一度の大地震(震度6強~7)でも倒壊・崩壊しない。
耐震等級2 建築基準法レベルの1.25倍の強さ 数百年に一度の大地震(震度6強~7)の1.25倍の力でも倒壊・崩壊しない。
耐震等級3 建築基準法レベルの1.5倍の強さ 数百年に一度の大地震(震度6強~7)の1.5倍の力でも倒壊・崩壊しない。

住宅を新築する際は、「耐震等級◯相当でお願いします」と依頼すれば、工法に関係なく一定の耐震性を得られることになりますが、これは全て設計通りにきちんと建築されているのが前提のお話です。

ただし、「耐震等級〇相当」と「耐震等級〇」とでは、実際に得られる強さが異なる場合がある点に注意しなければなりません。「耐震等級〇」として正式に認定を取得する場合には、「住宅性能表示制度」の利用が必要です。

 

住宅性能表示制度の利用で、外部の審査を受けた上でお墨付きをしっかりと受けられます。一方で、制度を利用していない場合には、「耐震等級〇相当」といった表現が用いられます。この場合、設計者や建築会社がそのつもりで設計してはいるものの、外部のチェックや認定を受けるわけではありません。住宅性能表示制度を利用する場合には別途費用がかかりますが、より確実な耐震性能を得たい場合には適宜利用を検討すると良いでしょう。

また、設計段階では「等級2(3)でお願いします」とリクエストしていたはずなのに、いざ工事が始まってから等級1で設計・施工されていたケースもあります。契約上の仕様や実際の施工に希望の耐震性が反映されているかどうか、しっかり確認することが大切です。

「在来工法」と「ツーバイフォー工法」の不具合事例

「在来工法」か「ツーバイフォー工法」かに関わらず、設計通りに正しく施工されていなければ、耐震性能は保たれません。さくら事務所の調べでは、こうした構造に関わるタイミングでの検査結果として、約8割の住宅に何らかの施工ミスが見られたというデータが出ています。実際にあった不適切な施工事例を紹介します。

在来工法によくある不具合

事例①:ナットが手で回る(動く)(固定不良)

事例②:ボルトが手で回る(動く)(固定不良)

事例③:筋交いと柱を固定する金物が設置されていない。筋交いの欠き込みが見られる。

 

ツーバイフォー工法によくある不具合

事例④:ビス(ねじ)の間隔が20㎝以内と指定されている箇所で20㎝を超えてしまっている。

事例⑤:ビス(ねじ)を留める箇所が石膏ボードの接続部分付近で端部に寄りすぎていたため、ビス(ねじ)と石膏ボードが固定されていない可能性がある。

事例⑥:面材耐力壁に釘がめり込んでいる。

事例⑦:指定されているビス(ねじ)以外の金具が使用されている。(左側の金具)

完成後に発見できない重大欠陥に「工事中の第三者チェック」を!

工程別の不具合発生率データ

「在来工法」であれ「ツーバイフォー工法」であれ、上記のような工法によって起こりやすい不具合はあるものの、いずれの工法であっても、正しく設計して正しく施工されていれば、工法に優劣はありません。

求める耐震等級の設定とそれを実現するための施工管理が最も重要です。それには専門的な知識が必要になるため、信頼できる専門家への相談や、そのサービスの利用をお勧めします。決して、イメージだけで工法を選ばないようにして下さい。

本来、施工ミスを防ぐ最も良いタイミングである工事中に、完成後には発見できない基礎・構造などの建物の重要箇所を確認するのがベストです。

上記不具合事例をはじめとして、さまざまな施工ミスが現実的に発生しているということを踏まえ、第三者のホームインスペクションを利用するなど、工事中から出来る対策を検討すると良いでしょう。

参考コラム:新築一戸建ての第三者機関検査は必要?費用やよくある悩みを住宅検査のプロが解説!

新築工事の段階ですでに「約80%」の施工ミスを発見!

20192020年にかけて大手ハウスメーカーや地元の工務店まで幅広く工事中の施工ミスを集計・分析した結果、おおよそ8割近く発生していることがわかりました。

新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)サービスは、本来施工ミスを防ぐ最も良いタイミングである工事中に、完成後には発見できない基礎・構造など建物の重要箇所について、建物に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が複数回の検査をし、引き渡し時の完成検査(内覧会同行チェック)も併せて行います。

施工ミスの原因は、現場監督が「法律や規定を知らなかった」「うっかり間違えた」など、初歩的なことが多いです。しかし、工事中の施工不良は住宅完成後に立ち戻り検査をすることができなく、時限爆弾式に10年以上たってから大きな不具合が発生するなどのケースも多々あります。欠陥住宅を未然に防ぎたいお客様は、当サービスの利用など工事中からの対策を検討すると良いでしょう。

※工事途中からのご利用も問題ありませんので、お急ぎの方はまずは一度お問合わせください。

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ホームインスペクター 豊泉 元
監修者

さくら事務所 プロホームインスペクター
さくら事務所 住宅診断プランナー

豊泉 元

大学工学部卒業後、建設会社に入社。ものづくりを現場で経験するため、住宅の基礎やマンション躯体の施工業務に職人(多能工)として従事。その後、大手リフォーム会社の現場管理者として、既存住宅及びマンションの改修工事に携わる