新築一戸建て工事中のチェックポイント⑫ 断熱工事

  • Update: 2018-02-16
新築一戸建て工事中のチェックポイント⑫ 断熱工事

新築一戸建ての工事中のチェックポイントを工程ごとにご紹介する本連載、前回は防水についてご紹介しました。

第12回のテーマは、室内の快適性を左右する断熱について、工事中の第三者現場チェックサービス「新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)」を行うホームインスペクター(住宅診断士)が注意点を解説します!

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新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)サービス

断熱工事は必ず、防水工事のあとに

防水工事が終わると、室内の断熱工事を行います。この防水工事と断熱工事の順番が逆になっていないかどうか、必ず確認してください。

防水工事が終わっていないのに断熱工事を行うと、雨が降ったときに断熱材が濡れてしまい、大幅に断熱性能が落ちてしまったり、カビが発生することも。濡れ方がひどい場合、断熱材をすべて交換しなければならないケースもあります。

日本は地震大国なので、耐震性能は法律で義務化されていましたが、断熱性能は義務化されておらず、フラット35や35Sなど一定の基準が定められた住宅以外は、どんなに低い断熱性能でも家を建てられる状態でした。

しかし、2020年から省エネ基準が義務化し、一定レベルの断熱性能が必須条件となります。これから戸建てを建てるなら、2020年の基準を満たしておくことは最低基準でしょう。目安はフラット35Sの基準や住宅性能表示制度の温熱環境(断熱等性能等級)等級4です。

ご自宅がどのレベルで設計されているのか、売り主や施工会社に確認すると良いでしょう。

断熱方法の種類/壁面

充填断熱

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柱や枠材の内側に、グラスウールやロックウールなどの断熱材を入れていく方法。断熱の方法として現在最も多く採用されている方法です。日本では、袋に入っているグラスウールを使うことがほとんど。

グラスウールやロックウールは、綿のようなやわらかいものを入れていくため丁寧な施工が必要です。すき間があいたり、留め方が間違っていたり、施工方法に問題があると、断熱材本来の性能を発揮することができません。

充填断熱にはグラスウールや、ロックウールの代わりに、発泡ウレタンやセルロースファイバーと呼ばれる断熱材を柱や枠材の内側に吹き込む工法もあります。すき間なく充填できるのがメリットですが、費用はグラスウールやロックウールより高めです。

外張り断熱

外張り断熱

柱や枠材の外側に、板状の断熱材を張っていく方法。断熱工事が簡単で、設計時の想定に近い断熱性能を出すことができます。断熱材の張り方や細かい部分の施工方法にはいろいろな基準があります。その基準に基づいた施工が行われているかどうか確認しておきましょう。

天井・屋根面の断熱の種類

天井断熱(てんじょうだんねつ)

天井断熱は、天井のすぐ上に断熱材を敷いたり、吹き込んだりしていく方法。現在、最も多く使われている方法です。一戸建ての天井は、2階または3階の梁から天井を「吊るして」あります。天井を吊るしている部材がそれほど太い材料ではないため、断熱材を敷きこむ作業は梁の上に乗っておこないます。

小屋裏の高さが高ければ作業はおこないやすいのですが、低いときの作業は大変で、作業も難しくなります。断熱材の敷設は、ダウンライトや配線、配管を避けながらの作業です。天井断熱は断熱材を施工する面積が狭いため、断熱材の費用が安くなります。ただ小屋裏が断熱材の外となるため屋外と同じように夏は暑く、冬は寒くなってしまい、小屋裏の利用ができなくなります。

屋根断熱(やねだんねつ)

天井面ではなく、屋根面に断熱材を施工する方法。工場において断熱材を屋根の下地合板で挟み込み、屋根工事と同時に屋根断熱が完了する方法もあります。断熱材を厚くするほど屋根の厚みも増えますが、小屋裏も室内と同じ断熱環境になるため、家の中で実際に使うことができる空間は広くなるというメリットが。天井断熱や桁上断熱と比べ、断熱材を使う面積が広くなる分費用はかかります。しかし小屋裏を有効に利用できるのが屋根断熱の最大のメリットでしょう。

基礎・床の断熱の種類

床断熱(ゆかだんねつ)

日本で建てられている一戸建ての多くは、1階の床の下に断熱材があります。これを床断熱といいます。床断熱によく使われる断熱材は発泡系の断熱材か、グラスウールの重たいもので、板状になっているもの。入れ方として多いのは、床を支える根太(ねだ)の間に入れていく方法です。床断熱では、配管の貫通部分、部屋の境目、床下点検口などに注意して施工する必要があります。

基礎断熱(きそだんねつ)

基礎断熱は、床ではなく基礎のコンクリートを断熱する方法。断熱材には板状の断熱材がよく使われます。基礎断熱にする場合、床下換気口や、土台と基礎の間の基礎パッキンを使わずに、土台と基礎を密閉して1階床に通気ガラリを設ける等して空気を動かす必要があります。基礎断熱にしただけでは、床下の空気が停滞してしまうためです。

基礎断熱は床下の空間も室内扱いになり、床断熱の床下と比べ温度と湿度が安定します。寒い地域でも床下が氷点下になることがなく、寒い時期に水道管が破裂する心配が少なくなります。基礎断熱には、基礎コンクリートの外側か、または内側に断熱する2通りの方法があります。理想は基礎コンクリートの外側に断熱する方法。この場合、シロアリ対策をするか、シロアリに強い断熱材を使用する必要があり、コストも高くなります。基礎コンクリートの内側に断熱する場合、シロアリをあまり気にする必要はなく、一般的な断熱材を使用できます。

とはいえ、断熱材の欠損や敷き込み忘れなどは完成引渡し時の内覧会でも指摘の多い箇所です。適切な設計がされていても、図面通りの施工がされていなければ意味がありません。できれば工事中にしっかり確認したいものです。

次回は、いよいよ大詰め、内装下地工事について解説します。